第32回日本・EU議員会議(2011年5月19日-20日)の「第2セッション エネルギー政策及び気候変動」におけるリードスピーチの原稿をアップします。
(谷あい)
リードスピーチ
(はじめに)
日本国、参議院議員の谷合正明です。
本日は、東日本大震災と原発事故を受けて、今後の日本の気候変動・エネルギー政策はどうあるべきかについて、所見を述べたいと思います。
(温室効果ガス削減の中期目標について)
まず、1点目、日本の温室効果ガス削減の中期目標についてであります。
日本政府は、中期目標については、すべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、「2020年までに1990年比25%削減」という野心的な目標を世界に表明していますが、国内では、東京電力福島第一原発の事故を受けて、目標数値の引下げ、あるいは目標自体の撤回を求める見直し論が出てきているのも事実であります。
しかしながら、25%削減という数値目標は、気候変動による深刻な影響を回避するためには、先進国全体で「2020年に1990年比25~40%の削減が必要」というIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の指摘を踏まえたものであり、引き続き堅持すべきものと考えております。
(原子力政策の見直し)
その一方で、気候変動政策と表裏一体の関係にあるエネルギー政策、特に原子力政策については、見直しは避けられない状況にあります。これが2点目です。
昨年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、54基稼働中であった原子力発電所について、2020年までに9基の新増設、2030年までに14基以上の新増設などにより、原子力を含むゼロ・エミッション電源比率(再生可能エネルギーを含む)を、2020年までに50%以上、2030年までに約70%とすることを目指しております。しかしながら、今回の原発事故を受けて、目標の実現どころか、現状維持さえも困難になりつつあると言わざるをえないからであります。
(地域密着型の自然エネルギーの導入拡大)
それでは、25%削減目標の達成に向け、原子力に代わるゼロ・エミッションのエネルギーを何に求めていくかといえば、やはり地域密着型あるいは地域分散型の自然エネルギーを中心とする再生可能エネルギーの導入拡大です。これが3点目です。
導入拡大にはコスト面などで課題が多いとは言え、環境省の調査によれば、国内では特に風力発電で大きな導入ポテンシャルが期待されるところであります。問題はエネルギーに関してパラダイムシフトを行う意志と政策資源の投入です。
また、自然エネルギーは地域偏在の傾向があるので、地域ごとに最も適したエネルギーを選択することにより、地域密着型エネルギー利用への転換を図っていくことも重要であります。このことは、いわゆる送電ロスの改善にもつながることになります。
(省エネルギー・節電社会の定着)
4点目ですが、重要なことは省エネルギーということです。今の日本はエネルギーの平均60%が環境中に捨てられています。計画停電が言われている中、家庭部門や事務所では30%近くの省エネが可能ということも指摘されています。
東京電力福島第一原発の事故により、東京電力管内では今夏に電力不足が予想されることから、政府は企業や家庭に対し、前年比15%の節電を求めることとしております。
こうした省エネ・節電対策は省エネ・気候変動対策と大筋で重なることから、今回の原発事故を機に、節電社会やネガワット(100万キロワットを省エネすれば100万キロワットをつくったと同じこと)という考えを定着させていくことも重要であると考えております。
以上の観点から、東日本大震災からの復興に当たっては、災害に強い都市づくりにとどまらず、地域の自然エネルギー・省エネルギーの仕組みを最大限に取り込んだ環境都市づくりを目指すべきものと考えております。
(結び-国際枠組み)
最後に京都議定書第一約束期間終了後の2013年以降の次期枠組みづくりについては、本年末のCOP17(南アフリカ・ダーバン)が交渉期限とされております。
私はポーランドで開催されたCOPの経済大臣会合に出席したこともありますが、このCOP17では、京都議定書に代わる、すべての主要国、特に米中が参加する実効性のある国際枠組みについて合意が得られるよう、日本とEUが連携し、人類の安全保障の確保に向けて、交渉に当たっていくことに期待を申し上げつつ、私のスピーチを終わります。
ご静聴ありがとうございました。