都市部の若者を中心に、脱法ドラッグが広がっている。幻覚や依存症などの健康被害が指摘される一方、所持や使用は禁止されていない。事態を重く見た公明党は、先日、厚生労働部会内に脱法ドラッグ対策検討ワーキングチーム(座長=丸谷佳織衆院議員)を設置した。今後の対策と課題について、ワーキングチーム事務局長の谷合正明参院議員に聞いた。
――脱法ドラッグの拡大が指摘されています。
谷合正明事務局長 脱法ドラッグは、2、3回分を数千円から1万円前後と比較的安価で購入できます。また、インターネットやアダルトショップでの販売のほか、都内では路上で販売している所まであります。そうした購入時の手軽さに加え、ダイエット効果や勉強に集中できるなど薬物についての誤った認識や「合法ドラッグ」と称されることなどによる抵抗感の稀薄さも一因としてあります。
――乱用の影響は。
谷合 インターネットで購入した脱法ドラッグを乱用した男性による刺殺事件や同性愛の男性に大量の脱法ドラッグを与えて死亡させるなど、昨年(2004年)来、他人に危害を加える事件が発生しています。脱法ドラッグの中には、依存症があり、幻覚や妄想、薬物精神障害など麻薬と同様の症状を引き起こすものもあり、所持や使用が禁止されていないからといって、決して安全なわけではありません。
また、使用を繰り返すうちに量や回数が増え、麻薬や覚せい剤の入り口(ゲートウェー・ドラッグ)となることも懸念されます。急速に広がる脱法ドラッグへの対策は急務だといえます。
――なぜ規制が難しいのですか。
谷合 脱法ドラッグの製造・販売業者は、規制薬物の化学構造式の一部を変えることで次々と新しい薬物を製造することで規制を逃れています。一方、新規の麻薬指定には人体への影響などについて科学的根拠が必要で、検証には相応の時間が必要です。厚生労働省は、精神毒性などが確認され次第、そのつど麻薬に指定。今年度(2004年度)は2つの物質が新たに指定されますが、研究機関が限られていることもあり、検証が追いつかないのが現状です。
また、アロマオイルやビデオクリーナーなどと称し、薬事法での規制が困難な場合も指摘されています。
――行政の対応は。
谷合 東京都は、脱法ドラッグについて知事指定薬物として製造、販売などの行為を禁止する条例を4月から施行する予定です。都の職員に立ち入り検査の権限を与える一方、知事指定薬物となる前でも販売中止などの命令を可能にし、違反者には懲役や罰金を科します。一方、厚労省も、省内に有識者検討会を設置し、法改正も視野に、10月までに対応策をまとめる方針です。
――公明党の取り組みは。
谷合 公明党青年局は、新たな青年政策として、薬物乱用対策の強化を掲げ、東京を中心に首都圏での署名運動を行っています。ワーキングチームの丸谷座長は、2月28日の衆院予算委員会で教育・啓発活動の重要性を指摘し、「薬物乱用防止キャラバンカーの中に脱法ドラッグの内容を追加すべき」と主張。黒川達夫厚労相大臣官房審議官は、脱法ドラッグについてもキャラバンカーの活用、強化を推進する考えを示しました。
このほか、薬物乱用防止教室の積極展開やキャラバンカーの増設など、公明党は薬物乱用の防止に全力で取り組みます。
(公明新聞より転載)